NPO法人尼崎市身体障害者連盟福祉協会のブログです。当連盟に関する様々な情報を提供します。
先日、毎日新聞に次のような記事が載りました。記者のコラムらしいのですが、私たちにとって重要な示唆となる内容だと思いますので、抜粋して紹介いたします。
時の過ぎゆくままに
便宜と配慮の間に=岡田満里子
毎日新聞2015年12月9日 大阪夕刊 めっちゃ関西
言葉は、恐ろしい道具だ、と久々に思った。
「合理的配慮」という用語がある。国連の「障害者権利条約」で定義された言葉で、障害のある人の平等実現のために必要な変更と調整のこと。具体的には学校や職場、公共の施設などでのバリアフリー化や介助者の配置、点字、手話などコミュニケーション手段の確保などを指す。要は、障害のあるなしに関係なく、誰もが望んだ教育を受け、仕事ができ、快適に暮らせる社会環境に改善していこうという考え方だ。
この条約は2006年、国連総会で採択された。正文は英、仏、露、中国、スペイン、アラビア語の6言語。日本は07年に署名し、13年に国会で批准が承認された。日本語版は政府公定訳だ。
四天王寺大学大学院教授の愼英弘(シンヨンホン)さんは、「合理的配慮」の正文の語を調べてみた。障害者差別撤廃を掲げた権利条約の中で、「配慮」という言葉に違和感を覚えたからだ。すると、英語では「reasonableaccommoaation」。普通に訳すと「合理的な便宜」。中国語では「合理便利」。中国語の「便利」は「都合よくする」「便宜を図る」で、英語の意味と同じになる。英和大辞典でもaccommodationは、設備、供給、親切、調整など6種の意味があるが、「配慮」はない。
「合理的便宜」は、障害のある人が必要な便宜を依頼し、行政や企業などと話し合って調整する、事務的な作業。主体者は権利条約の精神通り障害者だ。しかし、「配慮」では、主導権は配慮する側にある。しかも、そこに、配慮してあげるんですよという情緒的なニュアンスも入る。施設整備や要員確保を迫られる行政や企業には、言い訳になるいい言葉だ。愼さんの話を聞き、役人の頭の良さはこういうところに使われているのかと、舌を巻いた。
全盲の愼さんは言う。「今さら訳文を変えろとは言いません。ただ、合理的配慮の主体は障害者の側にあるということだけは、忘れないでほしい」
そして、国は、時に「合理的配慮」なる訳文をひねり出す芸当をするのだということも、覚えておかねばならないだろう。(編集委員)
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